日本料理って

冬野由記

2006年11月18日 22:07

「日本料理」というとどんな料理を思い浮かべるだろう。
 常識的、かつ典型的なところでは、寿司、天麩羅、蕎麦・・・・。
 外国からのお客様を、最初にお連れするには天麩羅屋さんが便利ではある。典型的な日本料理としては名前も通っているし、何よりありがたいのは、たとえば「ベジタリアンです」というようなお客であれば「精進でお願いします」とオーダーできるからである。寿司だとこうはいかないし、最近増えてきた豆腐料理だと、好き嫌いというほどではないにせよ、個性が強い。食べ物の嗜好とは別の次元で、国によって、あるいは宗教によって、食べ物の禁忌というものがあるから、外国のお客様にはそれなりに気を使う。
 さて「日本料理」というか、日本の「元祖伝統的料理」ってなんだろう、と考えてみた。
 今日、日本料理といわれているものが、ある程度洗練されたものとして流布したのは江戸時代ということらしい。その原型が現れるのはおおむね室町時代だというようなことを何かで読んだか、見た。平安時代なんかは、貴族たちでも「お湯漬け」したご飯に根菜、菜っ葉、魚といった感じだろうか。
 もっとも、よく考えてみると、つい最近までは、それらの「日本料理」は、特定の人々の間で食されていたものだ。階級のことだけでなく、庶民でも江戸時代の「都市生活者」という人々を特定の人々と、ここでは言っている。
 江戸時代が、寿司とか天麩羅とか蕎麦といった今日の「日本料理」につながっていると言っても、外食産業やファーストフードが発達した都市部のことだろう。
 で、元祖日本料理って何だろうと考えて、ふと思いついた。
「鍋だ」
 とにかく、その土地で採れた野菜だったり、魚だったり、肉だったりを適当に水で煮て、それに穀類が入れば上等。それを皆でつつく。
 これなら、かなり昔から、どこでも食べていたんじゃないか。
 今みたいな贅を凝らした鍋でなくて、菜っ葉や大根を煮て、あれば少しの味噌で味をつけて、そこに少しでもお米のような穀類を加えれば最後は雑炊。
 こんどから「典型的な日本料理は何ですか?」と聞かれたら、とりあえず「鍋です」と答えることにしよう。で、
「じゃぁ、その鍋料理に連れて行ってくれ」
と言われたらどうするか。
 現代の鍋は、どの鍋も「典型的伝統料理」イメージからは距離感があるなぁ。

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