さぽろぐ

日記・一般  |その他の都道府県・海外

ログインヘルプ


インフォメーション


QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 2人
プロフィール
冬野由記
冬野由記
標高と緯度の高いところを志向する癖があります。そんなわけで、北国でのアウトドアや旅が好きになってしまいました。
旅の印象を絵にしたり、興が乗れば旅に携帯した笛を吹いたりすることもあります。

2007年09月21日

「火垂るの墓」と父

 今夜、民放で「火垂るの墓」をやっている。
 高畑勲の力作アニメーションだ。
 ただ、我が家では、これまでの幾度かの放映でもチャンネルをこれに合わせることはない。

 名作である。
 映画は観にいったし、ビデオも購入した。
 原作の小説ももちろん名作なのだろうけれど、アニメーションとして、高畑勲の作品の中でも、ひときわ優れた作品だと思う。
 たんなる思い込みではないという証左がある。

 上映後、発売になったビデオをすぐに購入し、それを家族で観た。
 父は、食い入るように、それを黙って観ていた。
 そして、
「もう二度と観たくない」
 と言った。

 駄作だったからではない。
 作品に嘘や甘さがあったわけでもない。

「つらすぎる」

 とも言った。
 そして、父はこう言った。

「あれは俺だ。俺たちは、ほんとうにあんなだった」

 最後にこう言った。

「こんな映画が作ることができるなんて想像もしなかったよ。アニメと言うものがどんなにすごいものか、よくわかる。だから、もう観ることができない」

 父にとって、ただでさえ「つらい」というこの映画を、にぎやかで軽薄なCMをはさまれて、無残にカットされた姿で、私も観る気はしない。
 だから、我が家では、「火垂るの墓」にチャンネルが合わされることはない。
 それに、我が家にビデオはあるけれど、繰り返し観て楽しめる映画でもないのだ。
 映画館で、息をつめてこの作品を観た、そのことを大事にしておきたい。
 じゃあ、二度と観ることがないかというと、そんなことはない。
 いつか必ず、ビデオを再生機にかけて、観るときが来る。
 父を心の底から泣かせてしまった、この映画を。


Copyright (c) 2007 Fuyuno, Yuki All rights reserved.  

Posted by 冬野由記 at 23:29Comments(7)徒然なるままに