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冬野由記
冬野由記
標高と緯度の高いところを志向する癖があります。そんなわけで、北国でのアウトドアや旅が好きになってしまいました。
旅の印象を絵にしたり、興が乗れば旅に携帯した笛を吹いたりすることもあります。

2007年07月24日

チェロ弾きたち その6(「憂い顔の騎士」デュ・プレ)

<前回の続きです>

 ジャクリーヌ・デュ・プレは、まるでエルガーの協奏曲を弾くために地上に舞い降りたのだとさえ思えるほどに、彼女とこの曲は深く結びつけて語られることが少なくないし、わたしたちもそのように聴くことが多い。
 もちろん、他のレコードでもすばらしい演奏を少なからず遺してくれているのだが、エルガーの演奏は群を抜いている。
 実際、この曲は、曲じたいも、数あるチェロ協奏曲の中でも際立ってすばらしい曲のひとつだし、「憂い顔の騎士」とたとえられるような、チェロという楽器の魅力を存分に味わわせてくれる名曲なのだが、世界がジャクリーヌの演奏に出会わなければ、これほどまでにこの曲が人気演目になっていたかどうかはわからない。
 憂い顔の騎士の手をとり、塔のテラスから人々に挨拶をおくる皇女ジャクリーヌによって、民衆は、彼が気品と知勇をあわせもったたぐいまれな騎士であることを知ったのである。

 瞬間(とき)を注ぎ込まれた音楽家。あるいは芸術家。かれらは、一瞬の中に他の誰も成し遂げられなかったような仕事を刻み付けて去っていった。
 ディヌ・リパッティ、ランボー、中原(中也)・・・そして、もしかしたら宮澤(賢治)・・・
 ジャクリーヌもそんなひとりだったろう。

 芸術はながく、人生はみじかい・・・

 一方で、ながく生き、その高みを維持し続け、惜しみない賞賛を受け続けた芸術家もいる。単に運命なのか、神さまのサイコロの気まぐれなのか、それとも、ながい季節を与えられた人たちには、そのことにも何か別の意味があるのだろうか。
 人生も芸術も長く、ついに色あせることなく最高の音楽を奏で続けてきた、そんな演奏家もいるのだ。

 彼は、若くして衝撃的なレコードデビューを果たした。
 あの、傲慢で癇癪もちのフリッツ・ライナーがシカゴ交響楽団に迎えられたとき、このマエストロによってメトロポリタン歌劇場から三顧の礼をもって引き抜かれ、シカゴに招かれた。
 あらゆる曲を、思い通りに弾くことができる、おそらくは古今でも最高の技術の持ち主。
 いっさいの曖昧さ、ごまかしのない、完璧な演奏。最高の教科書。
 そのレベルをデビューから今に至るまで、数十年の間、まったく衰えることなく保ち続ける異才。
 ごく若いうちに、そんな「完璧」を手に入れてしまった彼は、いったい何を目指し、どこへゆこうとしているのだろう。


Copyright (c) 2007 Fuyuno, Yuki All rights reserved.

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Posted by 冬野由記 at 23:00│Comments(0)音楽
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チェロ弾きたち その6(「憂い顔の騎士」デュ・プレ)
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